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概要

 龍。神社の欄間など神社仏閣で必ずと言って良いほど見られている聖獣です。十二支にも数えられ、その中で唯一の想像上の生物として日本人のみならず東洋の文化圏では非常に馴染み深い聖獣です。一方、西洋ではヒール的な存在で見られる事が多いようですね。

 そんな龍ですが、一対で表現されるとき…例えば仁王の阿形・吽形のように、上に昇る様子の昇竜と下へと降る降龍とで描かれます。代表例は品川神社などの鳥居でしょうか。なんとなく上へと向かう昇竜の方がめでたく、それだけで良いように思えますが、この対のあり方には、どうやら仏教的な意味合いがあるようです。仏教には「上求菩薩、下化衆生」という考え方があります。
・上求菩薩:悟りを求めて厳しい修行に励む
・下化衆生:慈悲を持って他の衆生に救済の手を差し伸べること
つまり、自身を厳しく鍛錬し昇華させる一方で、下々あるいは周囲に優しく施す姿をそれぞれで示しているそうです。この2つが揃うことが重要なのですね。

 龍の体色や姿には様々なものがあります。四聖獣で描かれるときには青ですし、墨絵のモノトーンの世界では白竜や黒竜が、歓喜天様で知られる待乳山聖天では、その由緒に突如として地中から湧き出た山を天から降りてきた金龍が廻って守ったところが境内地とされていると書かれています。このような体色には陰陽五行が反映されているとも言われ、木火土金水に対応した色彩が基本になっています。

縁起、ご利益

 龍自体は想像上の動物ですが、神社によっては蜥蜴が龍の化身として見られうことがあるようです。また、スピリチャル系の方々では雲に着目してその形が龍と観られれば吉兆ともしています。
 一方、やはり長い胴体や鱗の様子から蛇と同一視する事もありますが、十二支で被るので…私見としては、蜥蜴の方が良かろうかと思ったりしています。

 伝統的に中国大陸では五本の爪を持つ龍を皇帝の象徴としていたりして、高貴なものを象徴する存在であり、また蛇や蜥蜴といった爬虫類の派生からか水と縁が深く雨乞いや水神と言った祀られ方をする事が多いようです。神社の手水舎でも水が出てくるところに龍があしらわれているのも、このためでしょう。また、後に書く陰陽五行に従い、体色により金運や健康運などを司るとも言われています。

姿

 龍の姿の特徴として文化圏により様々変わりますが、日本では一般的に角が生え、ヒゲを蓄え、鷹のような鋭い爪に光る目、そして全身を鱗で覆った姿で描かれます。中国大陸から伝わった描かれ方の場合、角は鹿、頭はラクダ、耳は牛、うなじは蛇、目は鬼、鱗は鯉など九似と言われる現実あるいは象徴的な部分を集めて一体としていたようですが、現在ではかなり自由に描かれているのではないでしょうか。

観られる主な神社仏閣

田無神社:境内各所に五色竜神他、多数あり

東玉川神社:拝殿手前の天井画

廣尾稲荷神社:拝殿内天井画。国宝画家の高橋由一の手による

下谷神社:拝殿内天井画。横山大観の手による

品川神社:双龍鳥居