十一面観音菩薩

梵名

エーカダシャムカ

真言

・オン・ロケイジンバラ・キリク
・オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ

概要

 六観音では阿修羅道の衆生を救い導き、利益を与える役割を担っている十一面観音菩薩。現世では十種勝利と言われる10種類の利益と四種功徳と言われる来世での果報を頂けるありがたい仏様です。

由緒

 十一面観音というほどですが、顔の数の由来をはじめ起源を示す根拠が少ないそうです。成立はヒンドゥー教の影響下で7世紀ごろと言われています。
 日本では奈良時代から信仰を集めていたようで、病気治癒をはじめとする現世利益を祈願する目的で信仰が広まったと言われています。このため様々な観音菩薩のお姿の中では聖観音に次ぐ像の多さだと言われていて、千手観音と並び一般の信仰を集めています。

お姿

 右手は垂下して数珠を持ち、左手には紅蓮を生けた花瓶を持っています。但し数珠は省略あるいは失われている場合もあります。また、真言宗豊山派の総本山長谷寺のご本尊は、左手には蓮華を生けた花瓶なのですが、右手には大錫杖を持ったお姿で岩の上に立っていらっしゃいます。これが豊山派の寺院で踏襲されていることが多く、「長谷寺式十一面観音」とも呼ばれています。
 腕は二臂のものが多いのですが、密教の経典では四臂や八臂の像も現れます。そして性別は菩薩のため本来ないのですが、十一面観音は女性的な柔らかさを表現していることが多いようです。
 そして尊号の十一面となる頭上面ですが、必ずしも一定していませんが、下のような形で構成されていることが多いようです。
・頂上:仏面
・前3面:菩薩面
・左3面:瞋怒面
・右3面:狗牙上出面
・後1面:大笑面
と呼びます。(正面の本面を含め11面としている像もあります)
頂上の仏面は阿弥陀菩薩の化仏が配置され、究極の理想である悟りの表情が描かれます。菩薩面は、穏やかな佇まいで善良な衆生に楽を施す慈悲の表情が描かれています。そして瞋怒面は眉を吊り上げ口を「へ」の字にして、邪悪な衆生を戒め仏道へと向かわせる表情となっていて、狗牙上出面は閉じた唇の間から牙が表に現れ、行いの浄らかな衆生を励まし仏道を勧める表情です。大笑面は悪への怒りが極まり、悪行を大笑いして改心させ、善道に向かわせるのだといわれます。
 このように、衆生を正しい方向へ導くお力を様々な表情で表現しているのでしょうか。 

十種勝利と四功徳

 十一面観音菩薩は、十勝利という現世利益と四功徳という来世での果報をくださいます。

十勝利

  勝利 説明
1 離諸疾病 病気にかからない
2 一切如來攝受 全ての如来に受け入れられる
3 任運獲得金銀財寶諸穀麥等 金銀財宝、食物に不自由しない
4 一切怨敵不能沮壞 全ての怨敵が害を与えることができない
5 國王王子在於王宮先言慰問 国王・王子が王宮で慰問してくれる
6 不被毒藥蠱毒
寒熱等病皆不著身
毒や蠱毒に当たらず、
酷い悪寒や発熱が出ない
7 一切刀杖所不能害 刀や杖でも危害を受けることがない
8 水不能溺 水難では死ぬことがない
9 火不能溺 火難で死ぬことがない
10 不非命中夭 事故で死ぬことがない

四種功徳

  勝利 説明
1 臨命終時得見如來 臨終の時に如来と会うことができる
2 不生於惡趣 悪趣と言われる地獄や餓鬼、畜生に生まれ変わることがない
3 不非命終 短命に終わることがない
4 從此世界得生極樂國土 死後、極楽浄土に生まれ変わる

守本尊

ご利益など

災難、病気治癒、財福授与、勝利など

ご本尊としているお寺の例

長谷寺 奈良県桜井市
総持寺 東京都足立区